娘への愛を形にして
不登校を克服
娘が、ある日突然不登校に……。子どもの気持ちを正面から受け止め、不登校の危機を乗り越えたお母さんの体験談です。
浅野直美さん(仮名・長野県) 恵美さん(仮名・中二)
「お腹が痛い」
私には、恵美(中二)、佳恵(小五)、恵理香(小三)の三人の娘がいます。
恵美が小学三年生のときのことです。三学期が始まって間もなく、学校の先生から電話がかかってきました。
「お母さんですか? 恵美ちゃんがお腹が痛いと言って保健室で寝ていますので、迎えにきてもらえませんか」
恵美は前日、風邪をひいて学校を休んでいました。しかし、たいしたことはないと、その日は登校させていたのです。
翌日も「お腹が痛い」と言う恵美。学校を休ませ、病院に連れていきました。診察の結果は、少し便秘ぎみなだけで、特に変調は見られないとのことでした。
――しかし、それから毎日、腹痛を訴えるようになったのです。
長女への期待
翌月半ば、私は子どもたちと一緒に宇都宮市にある幸福の科学の総本山・未来館に行きました。そこで私は、講師に恵美のことを相談しました。
私の話をじっと聞いてくださっていた講師は、近くで友だちと遊んでいる恵美をしばらく見つめた後、こんなふうにアドバイスをしてくれました。
「もしかしたら、親の愛情不足を感じているのかもしれませんね。できればスキンシップを心がけてあげてください。まずお母さんがいつも明るく、家の中の太陽になることが大事ですよ」
実は、私には思い当たることがありました。
恵美が幼稚園生の頃に佳恵が、その翌年には恵理香が生まれ、育児に追われていた私は、「恵美はお姉ちゃんだから」と、長女にあまり時間をかけて子育てして来なかったのです。その反省を込めて、私は恵美の「いいところ発見ノート」を付けることを決め、さらに意識して声をかけるように努めました。
「お母さん、どこにも行かないで」
春休みに入ると、恵美も少しずつ「お腹が痛い」と言う日が減り、体調も安定してきたように見えました。
恵美が四年生に上がった新学期、同時に佳恵が小学校に入学、恵理香も幼稚園に入園することになりました。そして、五月に入ったある日のこと。三女の恵理香の運動会の打ち合わせを終え、帰宅すると、すぐに電話が鳴りました。
恵美の担任の先生からでした。
「恵美ちゃんが、お腹が痛くて寝ているので、迎えにきてもらえませんか」
(――え? また、始まったの?)
私は、とてもやるせない気持ちを抱えたまま、恵美を迎えに行きました。そのまま、一緒に家に戻り、恵美を寝かしつけているときです。
「お母さん、しんどいよう……。ここにいて、どこにも行かないで」と、元気のない声でポツンと言ったのです。
「恵美……」
(この子、すごく寂しかったんだ――)私には、そんな恵美の気持ちが伝わってきたように感じました。
私と同じ苦しみ
翌日の朝、子どもたちを学校に送り出した後、一人でお祈りをしていたときのことです。私は、恵美について考えていました。
(恵美は頑張り屋だから、周りの期待に応えようと一生懸命。でも、何でもできるわけじゃないし、期待に応えきれないギャップに苦しんでいるのかもしれない。それが体の不調として現われているのかな……)そんなことを考えたときです。
(あっ、この苦しみって、私と同じだ!)と、思えたのです。
私自身、妻や母親、仕事、幼稚園の役員など、いろいろな役割を期待され、それに応えきれない苦しさをいつも感じていました。
(私は、そんな自分を受け入れて欲しいと思っている。きっと恵美も同じ気持ちだよね)
そう考えた私は、恵美に宛てた手紙を、その晩、恵美に読んであげることにしました。
「恵美は小さいときからしっかりしていたから、お母さんも期待しちゃって。恵美は『しんどいよー』って思っても、言わないで頑張ってきましたね。お母さん、恵美の気持ちが分かっていなかったことに気づきました。しんどいときはしんどいって言ってね……」
それから、主人や学校の先生とも相談して、私は恵美との交換日記をつけることにしました。
五月○日
お母さんより
「恵美、元気ですか? 今日はあまりお話ができなくて、ごめんね。ノートに書くと、口でうまく言えないことも正直に言えていいね。恵美も思ったことを何でも書いてね……」
恵美
「席がえをしたよ。となりがいなくて、ちょっとさびしいな……」
P.S:知らない漢字には、ふりがなをふってね」
普段、なかなか言ってあげられないことも日記だと書くことができました。この交換日記によって、親子の絆が深まっていくような気がしました。
家の中で太陽になる
その後、私は、以前、講師に言われたように「家の中の太陽」を目指そうと思い、「家庭を安らぎの場にする」という誓いを立てました。掃除にも気を使い、レシピ本を何冊か購入して、子どもたちが喜ぶような新たな料理にもチャレンジしました。
「お料理おいしいね!」と、子どもたちにも好評でした。
大川隆法先生の書籍『奇跡の法』の中には、「悲観的な想念に負けそうになったときには、それに負けないだけの肯定的な想念を自家発電しなければいけません」と書かれています。
私は家事と仕事で体が疲れてしまい、弱音を言いたくなるときには、(うまくできなくても、これを題材に成長していこう。頑張ろう!)と、自分に言い聞かせながら、努力を続けていきました。
すると、恵美の表情はどんどん明るくなり、口癖のように言っていた「お腹が痛い」という言葉も減っていきました。
そして、一年が過ぎ、なんと五年生のときはほとんど休まず、六年生になってからは一日も休まずに登校できました。現在は、毎日元気に中学校に通っています。