信仰を柱に乗り越えた

アメリカ生まれの娘の転校

 

横溝美代子さん(仮名・東京都) 

正大くん(仮名・小6) 美琴さん(仮名・小4)

 



 

「学校に行きたくない……」

 

私たち家族は、数年前、アメリカから日本に引っ越してきました。15年前夫と2人で日本を出発し、その後に長男・(まさ)(ひろ)と長女の()(こと)を授かりました。アメリカで生まれ、成長したわが子にとって、すべてが全く初めての日本での生活です。

 

2人は、9月の新学期から新しい学校に通い始めました。

 

実は、長男の正大は、知的障害を伴う自閉症で、私は日本での受け入れ先の学校をどうするのか、新しい環境に適応できるのかと、長男のことが何より気がかりだったのです。

 

一方、元来元気な娘に対しては多少の心配はあったものの、「日本語もできるし、きっと大丈夫」と、特に心配していませんでした。

 

ところが、11月ころから、美琴が朝になると「頭が痛い」「お腹が痛い」と、ポロポロと大粒の涙をこぼして登校を嫌がり、時には「アメリカの方がいい。帰りたいよー」と泣きじゃくりながら、私に言ってくることもありました。

 

 

日本とアメリカの違い

 

美琴から学校の様子を聞くと、勉強についていくことも、お友だちとの関係も、思っていた以上に大変なようでした。

 

生まれてからずっと英語圏で育ち日本語の土台がない娘には、微妙な言い回しが理解できなかったのです。お友だちが親切で「ダメじゃない。手伝ってあげるよ」と言ってくれた言葉も、「ダメじゃない」の部分が心に残り、自分が怒られていると勘違いしてしまったり……。学校の先生やみんなの話も分からないことが多く、不安だったのだと思います。

 

それに、日本とアメリカでは学校の在り方が全く違います。

 

例えば、アメリカの学校はやるべきことをやれば自由にしてよいという考えが徹底していて、教室で寝そべって調べ物をしていても誰からも注意されませんが、日本でそんなことが通用するわけがありません。

 

これまでアメリカ式で教育を受けてきた娘にとって、日本の習慣はきっと理解できないことばかりだったでしょう。

 

一事が万事そんな状況で、美琴は日に日に自信をなくしていったようでした。

 

 

娘に寄りそう気持ちで

 

私はふだんから「祈り」をとても大切にしています。お祈りのときに、フッと気づくことが多く、私にとって毎日の祈りは心の支えとなっています。

 

ある時、祈りのなかで娘に思いを向けていると、気づいたことがありました。いつも美琴を後回しにしていたことが心に()まったのです。 

 

私にしてみれば、普通に生活していると、自然と息子にとられる時間が多くなり、娘には小さい時から我慢をさせることが多かったのです。

 

それでも、がんばり屋の美琴は、大きくなってできることが増えていくにつれ、お兄ちゃんを助けてくれるようになり、「お世話することある?」と、いつも私を気(づか)ってくれていたのです。

 

思えば、日本に来てすぐの大変な時期にも、しっかり者の美琴には「あなたなら自分でできるでしょ」で済ませることが多く、「ママ、ここ教えて」と勉強を聞きに来ても「分かるところだけ先にやってて」と聞き流していました。

 

(元々学校大好きの娘が、行きたくないと言い出すなんて。美琴は、ずっと本人なりにがんばっていて、とうとう自分の力ではどうにもならないところまで来てしまったんだわ――)。娘にとってはギリギリのところまできていたのだと気づきました。

 

 

何事にも意味がある

 

息子に障害があると分かった時、「なぜ、この子が私たちのところに生まれてきたのか」と、ずい分考え、悩みました。当時、すでに幸福の科学を信仰していた私は、「すべては人生計画があってのこと。何事にも意味がある」という教えを学んでいました。そして、大変な人生を選んできた息子の偉大さを確信したこと、息子が私たち夫婦を親に選んでくれたことに涙したこと――。そんなことも思い出しました。

 

私はこの教えに出合えたからこそ、息子の障害も受け入れることができたし、学びの多いありがたい人生を選ばせていただいたという心境になれました。

 

それ以来、「何が起きてもこの経験は必ず私たち家族に大切な意味がある」という強い思いを持つように心掛けてきました。

 

今回の件で、障害を持つ正大だけではなく、兄妹として生まれてきた美琴も含めて、大切に育てる役目があるのだと気づきました。

 

美琴の悩みの一つに、人一倍努力しているのに、なかなか点数につながらない漢字テストがありました。「みんな100点なのに、私は20点なんだもん」と、涙を浮かべてテスト用紙を見せに来る美琴。私は、周りと比べずに、本人の努力の部分をよく見て、それをきちんと認めるように気をつけました。

 

「よくがんばったね。美琴の努力はママが知ってるからね」

 

「絵だって上手だし、美琴にはよいところがいっぱいあるんだから」

 

私は自分に言い聞かせるように、常にプラスの言葉で美琴を励まし続けたのです。

 

できるだけ娘のストレスを緩和(かん わ)させ、気持ちをゆったりさせるために、時間を割いてたくさん話を聞くようにしていきました。

 

美琴は、少しずつ、元気に学校に行けるようになりました。苦手な漢字にも前向きに取り組み、得意な英語をお友だちに披露(ひ ろう)して、本来の明る姿を見せてくれるようになりました。今は、獣医さんになることを夢見て、がんばっています。

 

毎日の祈りは、私に力を与えてくれます。幸福の科学には「子育ての祈り」「家庭調和の祈り」などの祈りがあり、その祈りの言葉一つひとつが心に響き、その時々に私に何かを教えてくれるのです。

 

この信仰に出会えたことを心から感謝致します。