ライバルがいたからこそ、

中学受験を乗り切れたわが子

 

塾で出会った友だちがライバルになり、

成績の結果で一喜一憂する息子さん。

そんななか、中学受験に向けてプレッシャーと劣等感に

押しつぶされそうになる息子を支えた親子の体験です。

 

坂口 東子さん(仮名・東京都) りんたろうくん(仮名・中1)

 



 

 

ライバルと切磋琢磨して成績アップ

 

長男のりんたろうが、中学受験に向けて塾通いを始めたのは、四年生の二月でした。ちょうどその頃に同じ塾に入ってきたのが、誠くん(仮名)という他校の子。自分と成績も同じくらいのこの少年が、りんたろうにはどうも気になる存在だったようです。

 

 

「あいつは、この問題できたんだって。」

 

「今日は、ぼくのほうが良かったよ。」

 

誠くんの成績と比べて、ライバル意識を燃やし、一喜一憂するりんたろう。

 

自分の方が良かったときは、「よし、もっとがんばるぞ。」と言ってごきげんでも、抜かれると口数が減って、「どうせぼくなんて……。」と落ち込みます。

 

 

そんな息子に、私も主人も「誠くんみたいな子がいるから、張り合って成績が伸びるんだ。」と励ましていました。

 

 

誠くんとの競争の成果があったのか、五年生の九月には、入塾当時に比べて、偏差値は十五もアップしていました。

 

 

 

「ぼく、ダメかもしれない。」

 

その後、成績は伸び、六年生の六月には一つ上のレベルのクラスに入れました。もちろん誠くんもいっしょ。

 

でも、クラスのレベルは予想以上に高く、最初のテストで、偏差値が十近くも下がってしまいました。誠くんはりんたろうよりも上でした。

 

 

「まだ先があるから大丈夫。」と言いながら、りんたろうは夏休みに基本をおさえる勉強で巻き返そうとしたようです。

 

ところが、九月のテストで、算数の偏差値がガクンと下がってしまったのです。

 

 

「夏休みにあんなに勉強したのに……。」

 

かなりのショックを受けたりんたろうは、その後のテストでも、ケアレスミスが目立つようになりました。ライバルの誠くんは算数が得意だったので、よけいに焦りになったのかもしれません。

 

 

「いくらやってもダメなんじゃないか……。」と落ち込みを隠しきれず、りんたろうは深刻なスランプに陥り、勉強に集中できなくなってしまったのです。

 

 

 

ライバルを目標にして頑張ろう!

 

りんたろうの気持ちをなんとか上向きにさせたくて、私は「あなたのこと、いつも応援しているのよ。」などと、ことあるごとに励ましました。

 

主人も、算数の問題を解くのが遅いりんたろうに、「物事をじっくり考えるところがお前の長所だよ。」と励ましたことで、「算数ができないわけじゃないんだ。」と、徐々に自信を持ちなおしたようです。

 

そして、時間内に問題を解く練習に集中できるようになりました。

 

 

また、私や主人が前から言っていたアドバイスも、この頃になって、りんたろうの胸に響いてきたようでした。

 

主人は、「自分よりできる子がいるってことは、ありがたいことなんだぞ。だからこそ自分も伸びていけるんだ。」と励ましていましたし、私も「相手が良くても、嫉妬するんじゃなくて、目標にして頑張ればいいのよ。」と言い続けていたのです。

 

 

いつしか、りんたろうの顔から、焦りやいらだちが消えていました。

 

 

 

ライバルから親友へ

 

そして十月。志望校の合格判定テストで、合格圏に入ったのです。これではずみがつき、りんたろうは勉強に力が入っていきました。

 

 

受験が近づくにつれ、誠くんとは切磋琢磨しながらも、「お互いがんばろうな。」という感じになってきたようです。

 

その結果、りんたろうは志望校に合格。誠くんも別の有名私立校に合格できました。

 

 

中学生になってからの二人は、学校が違うのに、どちらから言うでもなく、朝の電車の時間を合わせているらしく、「今、こんな勉強してるよ。」などと、会話もはずんでいる様子です。

 

 

りんたろうの受験を振り返ると、誠くんの存在はとても大きかったようです。「ライバルって、大切なんだ。」と、私はつくづく感じています。